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終の作業場(19)引っ越し

引っ越しを急いだのには訳がある。現(旧)作業場は広島県大竹市の山奥にあり、自宅から車で50分。若い衆二人は柳井市在住で1時間20分ほどかかる。新作業場までは3人とも30分。新築仕事の前にどうしても移っておきたかった。お世話になっている製材所から4.5tトラックを借り、2tトラックと軽トラと3台で木工機械を運ぶ。後日T君にもユニック車を出してもらう。新作業場では水平を見ながら微調整しながら決められた場所に機械をセットする。内部は広いのでフォークリフトを使ってのセッティングは意外とスムーズにいった。電気の引込み工事も当初の予定より早く完了。これから、気の遠くなるような材料の引っ越しが待っている。

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終の作業場(18)竣工

昨年春の着工からおよそ1年強で竣工。床面積112坪、約300人工。一年の仕事のおおよそ半分を作業場建築に費やした計算になる。コロナ禍の自粛期間を利用したと思えば良い。ラフな図面を基に作りながら検討、変更した部分も多くあった。すべて荒材のまま仕上げは一切なしは費用を抑えるための方策、表面的な綺麗さからは無縁の無骨な建物という、目指した目標はほぼ達成できたように思う。広いがらんどうの内部もつかの間。引越しが始まって機械が置かれると作業場らしくなるだろう。普段の住宅仕事とは一線を画した木造中規模建築、若い大工たちと色々議論しながら、楽しい1年を過ごさせてもらった。

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終の作業場(17)棟上げ4回目(最後)

海側に1間出たところに丸太を掛け渡して屋根を延長する。開口部に吊り戸をつけるために、たわみをどうやって最小限に抑えるかが課題だった。吊り戸は推測50kg/枚、それが8枚。4間の開口部、両側から3尺ずつ桁を持ち出して、実質3間スパンとしてその上に丸太を掛けることで計算上はかなりたわみが抑えられるだろう。これで建物の形がほぼできあがった。あとはできあがった屋根の下でコツコツと地道な作業を続けるだけ。

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終の作業場(16)棟上げ3回目

思いのほか工事は早く進んでいるような気がする。仕事の合間を見ながら空いた時間にということで始めた作業場建設、早く進んでいるということは仕事が少なかったことの裏返しとも取れる。手放しでは喜べない。収入減と出費増。そんなことは最初から分かっていたこと、何を今更。
今住んでいる自宅は以前から借家人として住んでいた粗末な平屋。家は持たないで借家で一生過ごすつもりでいたところ大家さんから「買ってくれ」との声がかかったのが十数年前。家、畑、田、山込み込みで500万円。10年住めば借家代と同じと計算。覚悟を決めて買った。既に元は取った。その後、家も必要に応じて手を入れてきたつもりだが、そのほとんどが間にあわせ仕事。綺麗にとか格好よくとかいう思考は一切働かない。大工が自分の家を綺麗に格好良く作るということに、どういうわけかずっと嫌悪感に近いものを持っている。大阪人は「あいつはええかっこしいや」と言われることを極度に嫌う。「お前はアホやな」と言われる方が嬉しい。その感覚に近いだろうか。「いろいろ着飾りくさりやがって、お前一体なんぼのもんじゃい」 石山修武は「自邸ナゾという恥ずかしいモノはもたない。しかし、自在な仕事場は必要だ。何にでも使えるような巨大なテントが欲しかった」と言っている。この感覚に私もいたく共鳴する。

「建物って一体いくらでできるんだろう?」 自分で毎回見積もりを作っておきながら、その疑問が拭えない。同じ問題提起を前述の石山修武も30数年前にしている。その石山修武が、数年前に建てた「岩国のアトリエ」について「アトリエ棟の低さ、軒の深さ、そして棟内に取り込まれた内外の区別無きテラスは出色である。私は今年、最高の作品と考えた。」と選評を寄せてくれていたのも何かの縁。今回の作業場建設は、極度に構造に特化した建物を木だけで人力で(プレカットを使わずに)つくればいくらでできるのだろうという実験でもある。結果的に「家なんてバラックで十分」となればいい。

荒材でざっくりと建物を建てること。これが以外と難しい。四角四面に製材された材料での仕事に慣れると、考えなくなる。荒材では、重点が仕上がりを綺麗に見せることから建物の強度の方に完全にシフトする。すべての寸法がバラバラ。直角かどうかも怪しい。そんな材にどうやって墨をつけるのか、どうやって刻むのか、適度ないい加減さが求められる。何を守って何を捨てるのか、常に取捨選択、順位付けが要求される。捨てることの難しさ、怖さ。そこを突破することの必要性を若い大工たちにも感じてほしいと思う。

総勢11人。自分より年配は一人だけ。今後この作業場が若い大工たちのホームベースとなればいい。

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終の作業場(15) 平行弦トラス

開口部となる7.2mの平行弦トラス。全て4寸(12cm)角のヒノキ材で1年前に加工を終えていたが、構造設計の山辺さんから下梁のせいを24センチにサイズアップの指示が出た。接ぎ手の位置も中央部から端部にするようにと指示。下梁には中央部で2tの引っ張り力がかかる計算、4寸角では心もとない。端部は中央部より引っ張り力は弱くなるので接ぎ手の位置変更も当然の指示と思われる。金輪継ぎの引っ張り強度が3t程度なので、計算上は大丈夫だが、ボルトで補強が望ましい。ボルトは太さ20㎜、座金も9*60*100の大きなもの。加工の手間を考えると、7.2m一本で接ぎ手なしが理想だと思えってきた。たまたま原木市で8mの松丸太の直材を見つけ、購入。皮をむいて上面だけ平らに加工して、下梁とした。この平行弦トラスの上にキングポストトラスが1間間隔で3組載ることになる。横ものが端から端まで1本の材で通っているのは安心感がある。当初の4寸角のみの接ぎ手だらけの平行弦トラスだったら、ペランペランの薄っぺらい頼りないものだったことを実感する。お客さんからの仕事では失敗は許されないので、こんな冒険はできない。ここぞとばかりに試行錯誤を繰り返し、失敗から学ぶ。

荷重によるたわみを考慮して2㎝ほどむくらせておいたがどうか。足りないか?吉と出るか凶と出るか。

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