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使い分け

釘とビスの話の続きです。

下地材に板を止め付ける場合、後に離れないようにする点でビスは釘に勝りますが、釘にも利点はあります。最初玄翁は釘の頭だけを叩きますが、釘の頭が板に近づいてくると、板も一緒に叩くようになります。そうすることで下地材と板の間にあった隙間を無くしながら打つことができます。板に反りがあった場合など、ビスの頭だけで押さえながら隙間をなくして密着させるのが難しい場合があり、釘を使う方が良い場合もある訳です。玄能で叩けば板に跡がつきますが、下地であれば問題なし。化粧の場合は、最後玄能をひっくり返して丸みのある方を使えば、板に傷がつくことはありません。コンプレッサーを使った釘打ち機はといえば、早くて連続して何本も打てて早いのですが、機械の細い頭で一発で打ち込むので、頭だけでしか押さえ込めない点で、ビスと同じく、手打ちに劣ります。ビスや釘打ち機を使う場合は、予め板と下地材を密着させておくことが前提になります。

(厚さ33ミリの下地板を90ミリの長さのくぎで止める。玄翁で手打ち。一本では抑えきれなかったので2本打ち)
P1160473.jpg

あとは施工性の問題。だんだんと重たい道具を引きずりながら仕事をするのが億劫になってきました。ビスを打つインパクトドライバーは1.4kg、鉄砲は大きい物だと2.6kgそれにコンプレッサーから伸びるホースがくっつくわけで、仕事中ずっとそれを携えておかなくてはならないけれど、手打ちの釘の場合は釘も玄能も腰袋に入れておけば両手は空で動けます。現場では当然早さも求められますが、一概に機械を使った方が早いとも言い切れません。思うように仕事が前に進まない若い衆を前に、何度かこんなことを言ったことがあります。「鋸を引いたり、玄能を振ったりする時間なんて高が知れている。その間の時間の長短で仕事の速さは決まる」 これがもし正しいとすれば、インパクトドライバーや鉄砲を手に取る時間の方が勿体無いという訳です。重たい機械を引きずり回して疲れるよりは、釘を千本手で打った疲れの方を取りたいと思ったりもします。 しかし場面場面で、早さ第一という場合やはり鉄砲は便利です。特に雨が怖い屋根仕事で、鉄砲は抜群の威力を発揮してくれます。

大工は木と木の間に隙間が開くことを極端に嫌います。特に造作仕事においては、どれだけ胴つきがついているかが、大工の腕の見せ所(一般的にはそうなってます)。口が開いた(隙間が空くこと)ような仕事をすれば手の悪い大工、下手くそ大工、場合によっては簡単に手抜き大工のレッテルを貼られてしまいます。見栄えが大事な化粧枠の仕事、特に和室の造作にビスは欠かせない。しかし、建築史家の村松貞次郎氏によれば、どうやら江戸時代まで日本は「無ネジ文化」だったらしい。とすれば、栓や楔、木の組手と最小限の釘だけで、昔の大工はそれをこなしていたわけです。江戸時代に戻る必要はありませんが、最小限の手道具と釘だけで作られた古い民家の改修に関わって先人の大工たちの仕事ぶりを目にすると、色々と考えさせられます。

最後に、解体時の問題。現時点で改修工事として請け負う家は築20年以上経たものが多く、それらの住宅にまだそれほどビスは使われていません。腰袋に玄翁とバールでほぼ解体が可能です。これが昨今のようにビスが主体だったらと思うとぞっとします。年数を経たビスはインパクトドライバーで逆回転させて抜こうにも、軸が錆びてもろくなっていて、折れてしまうことが多い。木の中で折れてしまったビスはもうほとんど抜くことは不可能です。解体すること、後に手直しすることを考えれば、ビスの使用は最低限に抑えたいと思いに至ります。

後から直す時のことを考えてつくる。直しやすいようにつくる。新築工事のなかった10年間で、そう考えるようになりました。つくった過程が見えるようにつくる。こわしやすいようにつくる。まずはこわす時の大敵、ボンドは使わないことから始まり、見えるところに脳天からの釘打ちを厭わなくなり、そして現在、ビスを減らしてゆこうという流れは、自分にとって自然な流れのように思っています。

2件のコメント

[C1016] 釘

「釘をさす」、社会通念上でもきっちりと決めると決めるときに使う。
大工仕事から生まれた諺かも。
記事を読みながら釘、されど釘、
効率という言葉の裏に潜むひと打ちの重みを知りました。
  • 2019-02-11
  • 投稿者 : tatu_no_ko
  • URL
  • 編集

[C1017] 靴も同じです

直すときのことを考えて作る。
壊すときのことを考えて作る。

自分で作る靴も同じです。
家をさわるようになって、ますますその思いは強くなったように思います。

今、ランドセルを作っていますが、ボンドを使って強度を高めることより、6年の間、壊れたらいつでも直せるように、直しやすいように作っています。

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