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このあたりの国産材の現状(4)

 最近、大手のハウスメーカーから中小の住宅会社まで、国産材の使用を売りにした住宅の宣伝が多くなった。杉やヒノキの人工林は下草刈りや間伐など人の手が入る事で維持される。国産材の需要が増えれば、山の手入れの具合も多少なりとも改善され、林業自体も良い方向に向かうような期待もある。しかし、本当にそうなのかは疑わしい。大手が国産材を取り出した背景には、国産材の値段が落ちる所まで落ち、外材との価格差が無くなった事が大きい。加えて、環境配慮、エコ住宅の気運から自社のイメージアップをはかる事。総合して自社の収益にとって国産材を使う事がプラスになるという経営上の戦略にすぎない。企業は利益を上げて還元する事がしごとだから、それ自体は避難されるべき事ではない。しかし、ほんの数年前まで、少しでも安い材料をと、日本の山になど見向きもしなかったのは誰だったのか。海外の森林伐採による森林破壊に加担し、日本の山をも手つかずもまま放置し、森を荒らしてしまったのは誰なのか。この辺りを自問自答して総括することが必要だ。それをすることなしに、今になって「環境のために国産材を使っています」と声高に叫ぶのは、あまりに都合が良すぎはしないか。正直に「住宅のコストを下げるため、安価な国産材を使用しています」とだけ書くべきではないのか。
 日本のあちらこちらで、環境に対する負荷が著しく大きい皆伐(かいばつ)が社会問題になりつつある。伐採経費削減のためには効率の良い方法だが、利益最優先で広大な山の木をすべて伐りつくし、その後に再植林も行わないといった事例も多いようだ。何の事は無い、かつて海外でやってきた事を、場所を日本国内に移したまでの事だ。彼らは決して「環境のために」国産材を使うのではない。そう思っている。こういう、字面を逆手に取ったような、おためごかしの、居直りのようなやり方は、「環境を守るために原発を建てよう」という手法と良く似ている。
 効率最優先の中で、日本の山までが大資本の中に取り込まれ、何十本単位あるいは何百本単位で木が売買されることが本当に良い事なのか、山を守ることにつながるのか。ここ岩国の市でも、購入者のほとんどがそこに顔を出さないので、どこの誰がどのくらいの量の木を買っているのかはわからない。しかし、大量に購入する者がいれば市としてはそちらの方に重点を置き出すだろう。数本単位の小口の木は少なくなるような傾向だし、売る側も材の選別にもあまり労力をかけなくなってきているような印象を受ける。少量の木しか買わない(買えない)者は、ますます外に追いやられるようだ。といっても、原木から自分の目で選んだ材料で家をつくるという事は、丸太の選別、製材の過程、材の加工、組み立てなどすべての過程がやはり楽しみであり、自分が大工であるよりどころの大きな部分である事に疑いは無い。昨日までと同じように、今後も地道に続けてゆくだけだ。

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2件のコメント

[C484] 説得力

木、建材としてのそれに心を注ぐ思いがよく伝わります。素人にも理解できる説得力を感じます。
木造りのへの思いを改めて知らされました。
  • 2011-01-20
  • 投稿者 : tatu_no_ko
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  • 編集

[C485]

tatu_no_koさん
大手の参入によって従前の仕組みは壊されます。大型スーパーが既存の商店街を駆逐したように、山主と林業従事者、山師、製材所に材木屋そして大工に建て主の関係も、今まさに崩されつつあるようです。
  • 2011-01-21
  • 投稿者 :
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