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杉玉
たまの用事で街に出て花屋の前を通ると、切り花の放つ清冽な香りで学生時代を思い出す。京都市内の花屋でのアルバイト、切り花やアレンジなどをお客に届ける配達要員。30数年前、時代はバブル。周囲の仲間は家庭教師や塾のバイトで時給2000円で稼ぐ中、こちらは時給600円前後。それでも由緒ある旧家、高級料亭、ホテルなど、およそ貧乏学生には縁のない世界を覗くことができる嬉しさは金銭の大小を超えた。その花屋は江戸末期から続く老舗とあって家族経営で賄い飯付きだった。可愛がってもらって居心地良かったのだが、不注意で配達途中に人身事故を起こしてしまってから足が遠のき、そのまま辞めてしまった。店は年末になると杉玉作りに忙しかった。
家の裏にある杉の木、この時期になると枯葉を屋根に落とし、樋を詰まらせる。思い切って剪定し、杉玉を作った。

家の裏にある杉の木、この時期になると枯葉を屋根に落とし、樋を詰まらせる。思い切って剪定し、杉玉を作った。
