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ミニ大工塾開催のお知らせ(山口県岩国市にて)
車であちこち走っていても、目に入る建築現場はハウスメーカばかり。町場の大工が建てる家を目にすることが少なくなりました。しかし調べてみると、住宅のプレハブ化率は2割程度。ハウスメーカー好きと思えるここ中国地方でも2.5割止まり。統計上では、まだまだ木造住宅自体は健在のようです。では、彼らはどこへ消えたのでしょう?これは推測にすぎませんが、プレカット(工場に木材の加工を任せること)が都会から田舎までこの国の隅々まで浸透しきってしまったことに原因があるように思います。
私が見習いに入った1994年のプレカット率は26%、独立した2000年は50%、2014年では90%。そして2018年現在、資料にはないですが、手刻みはさらに減って、おそらく数%でしょう。木拵えから墨付け、刻みで棟上げまで数カ月かかるところ、工場に出せば数日。大工は現場で材料が運ばれてくるのを待つだけ。そのため、大工が材料を抱えておいたり、広い作業場にお金のかかる木工機を何台も抱えておく必要がなくなりました。最新の電動工具やエアー工具を大きめのバンに積み込んでおいて、現場から現場を渡り歩けばいい、そんなスタイルになりました。 こうして大工がいろんな作業を工場に委ねて組立工に近くなってくると、相対的に社会的地位を下げて人に使われるようになって行くことになるのはある意味必然です。家づくりの機械化が進むと共に大きな資本が入り込み、個人でやってきた町場の大工は飯が食えなくなり、その傘下に入って下請け仕事に甘んじることになる。

このような流れの中、巷には中古の木工機械が溢れるよう放出されました。おそらくそのほとんどはスクラップ行き。私は逆にそれを買いあつめて作業場を作りました。こんな望まない状況があったからこそ今の自分があるというのは、なんとも皮肉なものです。新品では手が出ないような数百万円する機械が、中古で格安で手に入るという状況には本当に助けられましたが、内心はいろんな感情が入り交ざります。先人大工たちがどんどん旅立って行く遺品整理をするような心持ちとでもいいましょうか。
つい先だって、いつもお世話になっている道具屋さんから墨さしをもらいました。ある年配の大工さんから「使う大工がいたらあげてくれ」と託されたものだと声をかけてくれました。「自分はもう歳で、これを使うような仕事はしないから」 大工仕事自体をやめたわけではないけれど、もう大きな材料に墨をつけて刻むような仕事はしないということなのでしょう。4本もらい受けて3人で分けました。墨さしは、墨付けの時に材料に線を引くための道具、新築の度に大工が竹を割って作るのですが、自分の作ったものとはだいぶ形状が異なります。全体的に細くて丸っこくて、鉛筆の太さに近い。使ってみると持ちやすく手になじむ感じ。今までに見たことのない形状は、この大工さんの遍歴の中で自分と向き合いながら長年かかって改良を重ねてできたものなのでしょう。将来の仕事のために作り置いていた道具、自分の引退の象徴として手放されたわけです。こういったものはお金では買えません。ありがたいことです。

前置きが長くなりました。こうした時流に逆らい、プレカットに流れずにこれまで仕事をしてこれたのは、見習いの時に出会った「渡顎(わたりあご)構法」という理論上の裏付けがあったからです。「木に従う」という前提の元で、設計士と大工共同で、20年来構造実験を繰り返してつくってきた木構造のシステムです。このシステムを、興味を持つ皆さんに広く知ってもらいたい、少しでも同じ志を持つ仲間を増やしたいとの思いから、「ミニ大工塾」を企画しました。
日時: 2018年12月17日(月) 9時から12時頃まで (雨天決行)
場所: 山口県岩国市内の住宅建設現場
講師: 丹呉明恭氏(丹呉明恭建築設計事務所)
内容: 「木に従うこと前提とした木造住宅、木構造について」
費用: 資料代実費(数百円程度) ※当日集めます。
大工さんはもちろん、設計士さんなど、現在の家づくりに疑問を持つ方々の参加を募集しますので、ご参加ください。
興味のある方はこのブログ内右欄の当方HPを開き、「お問い合わせ」をクリック、
件名に「ミニ大工塾参加希望」と記入の上、お名前等必要事項を書いた上で申し込んでください。
場所の住所など、こちらから返信させていただきます。
質疑応答など、みなさんと活発な議論ができるのを楽しみにしています。
久良工務店 代表 久良大作(くろうだいさく)
私が見習いに入った1994年のプレカット率は26%、独立した2000年は50%、2014年では90%。そして2018年現在、資料にはないですが、手刻みはさらに減って、おそらく数%でしょう。木拵えから墨付け、刻みで棟上げまで数カ月かかるところ、工場に出せば数日。大工は現場で材料が運ばれてくるのを待つだけ。そのため、大工が材料を抱えておいたり、広い作業場にお金のかかる木工機を何台も抱えておく必要がなくなりました。最新の電動工具やエアー工具を大きめのバンに積み込んでおいて、現場から現場を渡り歩けばいい、そんなスタイルになりました。 こうして大工がいろんな作業を工場に委ねて組立工に近くなってくると、相対的に社会的地位を下げて人に使われるようになって行くことになるのはある意味必然です。家づくりの機械化が進むと共に大きな資本が入り込み、個人でやってきた町場の大工は飯が食えなくなり、その傘下に入って下請け仕事に甘んじることになる。

このような流れの中、巷には中古の木工機械が溢れるよう放出されました。おそらくそのほとんどはスクラップ行き。私は逆にそれを買いあつめて作業場を作りました。こんな望まない状況があったからこそ今の自分があるというのは、なんとも皮肉なものです。新品では手が出ないような数百万円する機械が、中古で格安で手に入るという状況には本当に助けられましたが、内心はいろんな感情が入り交ざります。先人大工たちがどんどん旅立って行く遺品整理をするような心持ちとでもいいましょうか。
つい先だって、いつもお世話になっている道具屋さんから墨さしをもらいました。ある年配の大工さんから「使う大工がいたらあげてくれ」と託されたものだと声をかけてくれました。「自分はもう歳で、これを使うような仕事はしないから」 大工仕事自体をやめたわけではないけれど、もう大きな材料に墨をつけて刻むような仕事はしないということなのでしょう。4本もらい受けて3人で分けました。墨さしは、墨付けの時に材料に線を引くための道具、新築の度に大工が竹を割って作るのですが、自分の作ったものとはだいぶ形状が異なります。全体的に細くて丸っこくて、鉛筆の太さに近い。使ってみると持ちやすく手になじむ感じ。今までに見たことのない形状は、この大工さんの遍歴の中で自分と向き合いながら長年かかって改良を重ねてできたものなのでしょう。将来の仕事のために作り置いていた道具、自分の引退の象徴として手放されたわけです。こういったものはお金では買えません。ありがたいことです。

前置きが長くなりました。こうした時流に逆らい、プレカットに流れずにこれまで仕事をしてこれたのは、見習いの時に出会った「渡顎(わたりあご)構法」という理論上の裏付けがあったからです。「木に従う」という前提の元で、設計士と大工共同で、20年来構造実験を繰り返してつくってきた木構造のシステムです。このシステムを、興味を持つ皆さんに広く知ってもらいたい、少しでも同じ志を持つ仲間を増やしたいとの思いから、「ミニ大工塾」を企画しました。
日時: 2018年12月17日(月) 9時から12時頃まで (雨天決行)
場所: 山口県岩国市内の住宅建設現場
講師: 丹呉明恭氏(丹呉明恭建築設計事務所)
内容: 「木に従うこと前提とした木造住宅、木構造について」
費用: 資料代実費(数百円程度) ※当日集めます。
大工さんはもちろん、設計士さんなど、現在の家づくりに疑問を持つ方々の参加を募集しますので、ご参加ください。
興味のある方はこのブログ内右欄の当方HPを開き、「お問い合わせ」をクリック、
件名に「ミニ大工塾参加希望」と記入の上、お名前等必要事項を書いた上で申し込んでください。
場所の住所など、こちらから返信させていただきます。
質疑応答など、みなさんと活発な議論ができるのを楽しみにしています。
久良工務店 代表 久良大作(くろうだいさく)