Entries
生かす方法は
納屋と蔵の解体を請け負った。例のごとく2t車がギリギリ入る民家密集地で、手こわし。納屋と蔵の中は農業用具でぎっしり、足の踏み場もない。でも2t車5台分の処理を終えて中がすっかりきれいになったら、とたんに蔵が魅力的に見えてきた。2間*3間の総二階。一抱えもありそうな丸太が使ってあって、迫力。解いて持ち帰りたいが、重機がなければ不可能、短く切りきざむ他はない。お金をかけて解体するくらいなら、手を入れて何かに活用できないか。そんな事を考えていると、解くのが惜しくなってきた。未だ結論下せず、手待ち状態になっている。期限なしの家具仕事をしながら延命策を考えているけれど、もうそろそろタイムリミット。施主さんを説得できる良い案はないものか。


ウッドデッキ
焼き印
夏休みが近づく。小学校のプール開放では、事前に申し込んでおいた者に「○年○組 名前○○○○ 電話番号○○-○○○○」と印刷されたカードが配られる。夏休み当日、それを持ってプールに行くのだが、濡れても平気なようにラミネートしてある。毎年のこのカードづくりがなかなかの手間らしい。「昔はかまぼこ板だった」という話を聞き、ならば「木でつくろう」と引き受けた。縦3センチ横15センチ厚さ1センチの杉の木を希望者に配り、自分でマジックで名前を書いてもらう。ノッペラボウではつまらないので焼き印を押そうと考えた。2センチ角の真鍮製のサイコロにマジックで裏返しに字を書き、ハンドルータで掘ってゆく。若い頃に篆刻に凝った事があり、簡単に考えていたのだけれど、金属を掘るのは初めての事。難航して4度やり直し。無事でき上がったら、実際の焼き印の作業はうちの坊主に。庭で焚き火をしてそのおき火の中で焼いて、一枚ずつ押してゆく。立ち上る煙の具合で焼き加減を推し量る。焦げたり、薄かったり、都合100枚。文字は「通」。少しでも子供たちに木に触ってもらいたい。果たして、喜んでもらえるかどうか。


若い二人は何を思う
家財道具の整理からはじまって約3週間、家財、新建材、木、土、竹、ブロック、コンクリート、瓦等々、2t車およそ32台分の解体材を運んで、人力解体を終えた。過酷な日々だったけれども、新築とはまた別の感慨。家を建てた時と逆の順序で、ひとつひとつの部材をほどいてゆく作業。つくる作業と壊す作業は表裏一体。工業生産の家は機械を使わないと壊せない。しかし、大工が手作業で建てた家は丁寧に解いてやりたい。いつもは家をつくる立場の大工。自分が建てた家をいつかは誰かが解体する時が来る。その時にその者に不快な思いを与えないようにつくりたい。望むらくは手でほどいて欲しい。手作業で解きたいと思わせるような家をつくりたい。役目を終えたら丁寧に葬ってやろう、そう思わせないものづくりはニセモノだ。心すべし。

