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行きつけの道具屋で

 丸ノコがうんともすんともいわなくなったので、道具屋に修理をたのみに行った。二十歳の彼も一緒に連れてゆく。ひと月以上たっていくらか周りも見えてきた頃、いろんな道具も見たかろう。ただ、電動工具主流の時代にあって、ノミやノコといった手道具はどこにも店に行ってもほとんど店頭には並んでいない。ほとんど売れないからだ。しかし、この時代にあって、絶滅危惧種である大工を志してこの道に入った者の興味の対象は、あくまでも古来のノミ、かんな、ノコといった手道具だ。このことは至極当然のことで、手道具よりも最新の電動工具に目を奪われるようなら、商売人としては成功するかもしれないが、職人としてはおそらく大成しないだろう。
 用事が済んで座敷箒を一本買ってトラックで家に帰る道すがら、「古道具がおいてあった」というので「使い古しの電動工具だろ?」ときくと、「いえ、ノコとかノミとか」という。何度も訪れているが今までそんなものは目にした覚えがないし、今日も目には入らなかった。半信半疑で道具屋に引き返した。と、店の片隅に使い古した中古のノコとノミが実際そこにはあった。時間をかけてその中からノコを7枚、ノミを3本そして差し金を1本選びだし、「これだけまとめて買うから安くしてもらえる?」「いいですよ」と合計2万円という先方の言い値で購入した。本職用のノコが1本1,2万円程度することを思えば、中古でもこの金額なら十分価値はある。それに、今主流の替え刃と違って一生ものだ。
 自分が使うノコもそのほとんどが同様の古道具だ。大半は道具屋に大工が目立てを頼んだまま何年も引き取りにこず、連絡が取れなくなったもの。道具屋は時効を見計らって仕方なく処分に出す訳だ。そういえばかつて彼にそんな話をした覚えがある。

 それらは、自分には見えなかったが、彼には見えたのだ。意思があれば見えるけれども、意志がなければ見えない。物理的に目には入っていても、そこに見ようという意志がなければ、実は何も見えていないのだ。彼のその意思を買って、ノコ7枚はすべて彼に進呈した。どうするか少し迷ったのだが、「半額はわしが負担してやる。半額は自分で払え」と彼に言った。半ば押し売りに近いかたちだが、「これからおそらく一生人生を共にする手道具、人に買ってもらっても嬉しくないだろ?自分のお金で買いたいだろ?」と、口には出さなかったが、こちらの意図が伝わったかどうか。

作業場に帰って、早速試しに挽かせてみた。
満足そうな彼の顔。

「自分で見つけて初めて自分で買った道具だ。大事にしろよ」

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納品

ご希望で、古色にオイルで着色して仕上げました。ふたり掛かりでなんとかトラックに乗せ、無事納品となりました。2mまでの長さのテーブルはよく見かけますが、それ以上のものはあまり見かけません。納品後、早速このテーブルの上でアイスコーヒーをいただき、後ろ髪を引かれつつ帰路につきました。

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ほぞ組み

穴を掘ってそこにほぞを差し込む。同じ寸法で穴とほぞを作ればきっちりと収まる寸法だが、手作業となるとなかなかそう簡単にはゆかないのが現実だ。ほぞと穴、オスとメス、男と女という言い方、どれも立派な大工用語だ。即物的なその物言いは感覚に訴えてわかりやすい。材料を立てて使うときに「材を男にする」といったりもする。

4枚のほぞを天板の穴に差し込み、割くさびを打つ。

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脚はケヤキで

大テーブルの続きです。古い民家を解体した際にとっておいたケヤキの大黒柱を脚に使うことにしました。天板とのバランスを見ながら寸法を決めます。断面は真四角ではなく長方形にすることにします。ケヤキは重量感があって木目もきれいでいいのですが、暴れるのが怖い。ですが、伐採後100年程度は経過している古材ならいくらか安心です。100年を経て磨かれて黒光りした表面を削ってしまうことに躊躇しますが、ここは割り切って、新たな役目を果たしてもらうべくノコを入れてかんなをかけます。

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大テーブルのかんな削り

雨が降り続いていますが、田植え間近の田んぼにとっては恵みの雨です。

幅80センチ、長さ2.5mの大テーブルのかんながけです。電気かんなで大まかに平面を出してから手かんなで仕上げてゆきます。納得ゆくまでやってよしと彼に任せています。研いでは削り、削っては研ぎ、これを繰り返しながら2日目です。悪戦苦闘していますが、どうあれ、頑張る後ろ姿はそれなりに美しいものです。

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格子戸をつくる

杉の柵の続きです。渡り廊下から土間に降りる場所に格子戸を作りました。建具はいつもは建具屋さんにお願いして作ってもらうのですが、今回は勉強の意味も含めて大工が作ってみました。材料の選定から木取りの方法、加工から組み立てに至るまで、普段使う材料の数分の一という大きさに神経を使います。
普段当たり前につきあっているはずの建具ですが、こうして自ら作る側になってみると、初めて気づくことも多くあり、当然ですが一筋縄ではいきません。うわべを眺めているだけで、本当は何も見ていなかったのだと気づかされます。

ともすればワンパターンに陥りがちな日々の仕事ですが、こうした作業から得た経験を大工仕事にも生かしてゆきたいと思います。

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