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木は切れない

大工です。

木を物理的に切るのは道具さえあれば簡単です。小さなものは手ノコで、大きなものはチェンソーで、ものの数分です。しかし、実際に木と向き合うと、切れないのです。武士が「お前は生身の人を斬れるか?」と問われるような感じでしょうか。既に切り倒された丸太や、製材されたあとの材木については、何のためらいもなくノコを入れるのですが、いざ生木を前にすると大きく躊躇し、立ちすくんでしまいます。 大げさなことを言いましたが、建築用材を確保するため山に入った時のことではありません。家の敷地に作業スペースを確保するために屋根を掛けるときのことです。庭には直径25センチほどのタイサンボクがあり、枝も張っていて邪魔になったのです。結局伐ることはできず、最小限の枝を落として、屋根の穴から木が空に向かって抜け出したような状態になりました。結果、空いた穴からしずくは滴り、雨のときはその下にある材料をシートで覆う作業を毎回繰り返しています。
 生木の状態から木に向き合えば、おのずから木と向き合うこちらの姿勢も問われることになります。そういった意味で、木を扱う大工として、山に入り、伐採現場に立ち会う必要性を感じています。

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