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木は切れない

大工です。

木を物理的に切るのは道具さえあれば簡単です。小さなものは手ノコで、大きなものはチェンソーで、ものの数分です。しかし、実際に木と向き合うと、切れないのです。武士が「お前は生身の人を斬れるか?」と問われるような感じでしょうか。既に切り倒された丸太や、製材されたあとの材木については、何のためらいもなくノコを入れるのですが、いざ生木を前にすると大きく躊躇し、立ちすくんでしまいます。 大げさなことを言いましたが、建築用材を確保するため山に入った時のことではありません。家の敷地に作業スペースを確保するために屋根を掛けるときのことです。庭には直径25センチほどのタイサンボクがあり、枝も張っていて邪魔になったのです。結局伐ることはできず、最小限の枝を落として、屋根の穴から木が空に向かって抜け出したような状態になりました。結果、空いた穴からしずくは滴り、雨のときはその下にある材料をシートで覆う作業を毎回繰り返しています。
 生木の状態から木に向き合えば、おのずから木と向き合うこちらの姿勢も問われることになります。そういった意味で、木を扱う大工として、山に入り、伐採現場に立ち会う必要性を感じています。

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コーヒー豆の鮮度について

大工です。
自家焙煎の店、という看板を良く目にします。店に入ると、十近い種類の焙煎された豆が大きな透明のケースにはいっていて、注文があるとそこからスコッブですくいとる、といった光景が普通です。
いろいろな店に立ち寄って豆を買いましたが、9割方おいしく感じません。
かつて現場を共にした大工の友人は、毎朝仕事前、現場でキャンプ用品でお湯を沸かし、持参した豆をその場で挽いてコーヒーを入れてくれました。今まで飲んでいたものとは別物のような味に、それ以降はまりました。その友人に連れられいろいろな店をめぐって、それからずっとこの店の豆を購入しています。

店には少量の豆がガラスの密閉容器に入れられて保管されています。瓶の首には焙煎日がかかっています。使い切ってから新たな焙煎に取りかかっているだろうと想像できます。今まで他に焙煎日を公開している店はありませんでした。尋ねても教えてくれないし、嫌な顔をされるのが普通です。そこには、味を二の次にした売る側の論理が見て取れます。

コーヒー豆の鮮度は味に大きく影響します。焙煎日を教えてくれない店では私は買いません。
自分で豆を買ってコーヒーを飲むようになってから、外でコーヒーを飲むことはほとんどなくなりました。

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ホンモノグループ 蔵展示会「ロック」 に行ってきました

安芸高田市で行なわれていたホンモノグループ 蔵展示会「ロック」に行ってきました。
大工くりき氏M.SAITo氏のホンモノグループ。
蔵の中にはひとつひとつ丁寧に作られた木の食器や家具、リメイクされたバックなどがセンスよくディスプレイされていました。

下の写真は使い込まれた脚立に板を渡したもの。そこに木の器が並べてあるのですが、何ともいえない渋い感じでした。

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木のスプーンの向こうに見えるのはろうそくのやさしい灯り。
とてもあたたかい雰囲気です。

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ちょっとした非日常の空間。
堪能させていただきました。

大工です。
直線と平面が極端に少ない空間。ほとんどのものが、曲がったり、えぐれたり、ねじれたり、朽ちたり、穴があいたり、さびたり、変色したり、ゆらめいたり、折れたりしていて、いきもののよう。そう、自然界に直線は存在しない、か。蛍光灯でこうこうとてらされたオフィスとは対極の空間。酒を片手に仲間と深い話ができそうに思えた。
片付けるのはもったいないですね、Kさん、Sさん。


端材の有効利用

大工です。

捨てられず、薪にもできず、とっておかれた端材。
特に広葉樹は捨てにくい。 杉、檜には悪いのだが。
ケヤキの端材。栓や楔に使うためとっておいたもの。そのまま穴だけ開けて筆立てに。
作業時間5分。自分使いのものだと、余分な作業を削ぎ落としたものがつくれる。
単に手抜きなのかもしれませんが、私は、これでよし。

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急須を直す

大切に使っていた急須が割れてしまいました。捨てることもできず、補修することにしました。
接着剤ではなく、初めて漆を使ってみます。
漆に小麦粉を混ぜて粘度を高くします。竹べらは即席に作ったもの。

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大切に使っていたわりには、真っ二つになってしまった急須です。
「何だか顔がかゆくなってきた気がする」などと言いながらも、丁寧に漆を塗っていました。

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漆を乾かすには適度な温度と湿度が必要で、温度は約20度、湿度は約80%ぐらいが理想らしいです。
クーラーボックスの中にレンガを置き、水を張って蓋。台所の片隅に置いておきます。
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乾燥するまで1ヶ月くらい。じっと待ちます。

縦かそれとも横か?

 大工です。
 「木は生きていたままの向きで使え」と、よく耳にします。木は、当然地面から空に向かって生えるので、横にして使うのは「?」となります。しかし、柱だけで家は建たないので、横にして土台、桁もしくは梁としても使います。その場合、その中で無理のない方法を選びとることになります。

 写真は10年が経過した檜風呂底部。柾目の赤身、水に強い材料を選んで作ってありましたが、長い間に底面の板の木口から水がしみ込んで腐りはじめています。側面の木も同様です。底面の木は横使い、側面も同じ。

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 木口からいったん入った水は、横使いの場合、重力によって抜けることは望めない。いったん入ると横に横に走ってゆく。常時湿度の高い場所にある場合は乾くことなく、徐々に腐り始める。

 ステンレス、プラスチックなどの素材がまだない頃、風呂は鋳物の五右衛門風呂。プラスチックの洗面器のかわりは桶。水をためるための桶や樽はもちろん木でできていた。(柾目材を使うのが桶、板目材を使うのが樽、樽には蓋がつく、といった区別があるらしい。)桶と樽、いずれも側板は縦使いで箍(たが)をはめる。底板は側板の中に水も漏らさぬようキツくはめ込まれて木口は表に出ない。側板は縦使いなので水は吸うが、同時に水切れも良い。桶ならひっくり返して乾燥させてやれば簡単に腐ることもない。こうしてみると、桶や樽は非常に理にかなった作り方をしていることがわかる。

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 思案するのが、外壁に板をはる場合。ここ瀬戸内では昔から焼き杉をよく外壁に用いていますが、それらを見ても、縦使いと横使いの両方があります。
 軒を深く出してやれば横殴りの雨でないかぎり板が直接雨に濡れることはありません。しかし、総二階だったり庇がなかったり、軒の出が浅い場合は悩みます。水に強い材を使えばそう簡単に腐ることはありませんが、やはり、長い歳月のあいだに外壁は下のほうから徐々に傷んできます。横使いの場合、傷んだ板の数枚だけ取り替えれば済みますが、縦使いの場合、途中で切って継ぐことはしたくないので全面取り替えることになり、かなりの負担です。以上の理由から、木の理にかなった使い方は縦だけれども、修理のことも考えると、外壁については今のところ横使いとしています。

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燃料としての木材

 大工です。
 在庫している薪の量が少なくなると落ち着かなくなります。建築廃材を薪としているため、主だった材種は杉、檜、松。火持ちの良い広葉樹ではないため、身長以上積んでおいても、みるみるうちになくなってゆきます。 数年前まで使っていた灯油ストーブなら、スタンドまで灯油を買いにゆけば良い話ですが、薪となると話はちがいます。束にして市販されてはいますが、一束およそ400円。一日3束使うと1200円。ひと月で36000円。4ヶ月使って144000円。都会で生活する人が山に還元する額としてはこれでも少ないくらいですが、財力のない場合はそうもいきません。
 在庫している端材の選別が始まります。使用可能性が低いと思われるものは薪にまわされることになります。日頃捨てられない端材で狭くなった作業場が少し広くなります。

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 風呂場の改装のため十和田石を取り寄せたのですが、送られてきた石が乗るパレットが杉材でした。つい最近まで、そのほとんどが外材でした。外材は検疫のため防虫処理がしてある懸念があり、これまで燃料として使うことは避けてきました。それが国産の杉材に変わったことは素直に喜びたい、そう感じた途端、以前製材屋さんが「外材が高くなって、みんな国産材に手を出し始めた」と話していたことを思い出しました。相対的に国産材に割安感が出たからなのでしょうが、節操のないことだとも感じ、複雑な心持ちです。


木材の風化について

 大工です。
 家を建てる場合、特別な事情がないかぎり、漆喰壁(塗り壁)もしくは板壁を使います。双方ともにその耐久性については歴史が証明しています。完全なメンテナンスフリーを意味するものではありませんが、傷んだ場合に部分的な補修を繰り返してやれば、100年以上は十分にもつでしょう。寿命が来たらそのまま土に、または焼却して灰をまくなどして自然に還すことができるのは、これらの材料の大きな長所です。
 板壁を採用する場合、基本的には無塗装としています。場合によっては柿渋を塗ったり、焼き杉を使ったり、あるいは日光が当たることで黒くなる液体を塗ったりすることはありますが、ペンキや防腐剤を使うことはありません。土に還るという木の持つ利点を損なうことになるからです。一昨年から、我が家では薪ストーブで暖をとっていますが、燃料として建築廃材を使うにあたって、ますますその思いを強くしました。ペンキのついた板は燃やせない(燃やしたくない)し、防腐剤に漬け込まれた木片は燃やした場合に灰に有害物質が残る懸念があるため処分に困るからです。
 木を、森の状態から、木材としての使用、役目を終えてからの廃棄のこと。これらを一貫して視野に入れておくことの重要性を痛感しています。

 写真は外構部の縦格子です。材料は杉の赤身。無塗装。当初ブロック塀でしたが、無機質で殺風景なのでその上にかぶせるようにして止めてあります。4年程度経っていますが、風雨にさらされて当初の杉の色は既になく、グレーに変色しています。しかし水に濡れても乾くことができれば、木は簡単に腐るものではありません。風雨に強い材料を使うこと、軒の出を大きくとって雨がかりを防ぐことを守ったうえで、外壁に板を使った家が増えることを強く望みます。

 この、グレーに焼けたような木材の色合い、私は美しく感じます。何年経っても色あせしないサイディングのほうが美しい、と言う方にはおすすめできませんが。

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軸組の模型をつくる

大工です。
新築や再生工事など、構造の検討を要する大きな仕事の場合は、まず軸組の模型をつくります。縮尺は1/20から1/33くらい。10mが33センチから50センチくらいの大きさになります。基礎から始まって土台、柱、桁、梁、母屋、棟木の順に組み立ててミニ棟上げです。模型での柱の太さはおよそ4ミリ。机の上で夜なべの作業となります。写真は大島の家の模型。

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家を建てる際、合計4回は棟上げをします。1回目は図面を読んで見積りの材料拾い出しをするとき(頭の中で組みます)。2回目は軸組模型をつくるとき。3回目は実際に墨付け、刻みをするとき(これも頭の中で)。そして、実際の建前で。それぞれの段階で、問題点や検討事項などをそれぞれの段階で洗い出し、解決した上で本番の棟上げとなります。 
その中でも、全体を一望できる模型をつくることの意味は大きいです。家は細かな部分の集まりですが、全体のバランスは大変重要です。模型でそれを確認する事ができます。

模型づくりは手間のかかる下作業ですが、私にとって思考の手助けとなる大事な方法です。工事が終わっても保管しています。大工として、あといくつできるのだろう?
人生は短い。な。


カテゴリを整理しました。

多くの来場者で賑わった見学会。
古民家再生に対する関心の高さを感じました。
また、じっくりと時間をかけて見学されている方も多く、みなさん存分に木の感触・香りを楽しまれているようでした。

今回、チラシをご覧になって初めてブログを見てくださる方もいらっしゃるかと思い、カテゴリを整理しました。
「大島の家」のカテゴリを追加してあります。工事のくわしい様子を、解体から竣工まで、順を追って記事にしてあります。ご覧になってみてください。

これからも家づくりに関することを中心に、大工の連れ合いと大工が協同して、随時更新してゆきたいと思っています。

今後ともどうぞよろしくお願いします。

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ご来場ありがとうございました。

 大工です。 
 週末2/7(土)、8(日)に開きました「古民家再生 完成見学会」、本当に多くの方々にご来場いただきました。まず、この場をかりてお礼申し上げます。ありがとうございました。来て頂いたみなさんからは、年数を経たもの、もしくは使い込まれたものに対する熱い眼差しを、私なりに感じる事ができたことは、今後の仕事をする上での大きな励みとなります。
 今回、大工として再生工事に携わらせてもらいましたが、そこから、古くから伝わる大工の技術を教わったのはもちろんのこと、それ以上のもの、大工として生きてゆく道標のようなものをもらったようにも感じています。これを糧として、これからに役立てたいと思います。(過去記事「古民家再生という仕事を終えて(大工より)」)

 もし、今回の見学会で何か感じることがありましたら、是非ご連絡下さい。仕事の有無に拘わらず、良いご縁になればと思います。

 今後ともよろしくお願いします。

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大工の連れ合いです。
今回の見学会では、私達の予想を遥かに超えた多くの方が、はるばる大島まで足を運んでくださいました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

用意していたパンフレットも足らなくなってしまい、申し訳ありませんでした。お伝えしましたとおり、後日郵送させていただきます。


みなさま、本当にありがとうございました。


2/7(土)、8(日) 古民家再生~完成見学会のおしらせ

大工です。

この土曜日、日曜日に、以前からお知らせしていた古民家再生の完成見学会を開きます。詳しくは右の写真をクリックしてください。大島大橋を渡って車で30分弱です。事故のないよう、気をつけてお越し下さい。
当日は現場近くには案内板を出します。駐車場あり。

どんどん壊されてゆきつつある古民家。少しでも多くの方に見て頂くことで、その流れをいくらかでもくい止めたいとおもっています。

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油からあげる

大工です。

油に浸けて箸で取り出す作業。新聞紙の上に山になってゆく様を見て、短冊状になったサツマイモを揚げる料理人になったような錯覚を覚えました。

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箸置きをつくる

連れ合いが箸置きを作りはじめました。
端材の有効利用です。丸ノコ盤で板を挽き割り、まず棒状に。、そのあと長さを決めて切ってゆきます。

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機械を使ってひとつずつ丸くえぐってゆきます。


数が多そうなので、私も面取りをお手伝い。サンドペーパーの上で角をなめるように。結構力が必要です。ひたすら、黙々と家内制手工業。

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仕上げに油をかけるとあめ色に。色合いも、木目も、削り具合もひとつひとつすこしずつ異なり、それぞれ表情が違います。ひとの顔もそれぞれ個性があるように。

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