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古民家再生という仕事を終えて(大工より)

 連れ合いの大工です。はじめまして。
 10月5日から、順を追って古民家再生の仕事についてかみさんが書いてきましたが、実際の工事が始まったのは昨年の8月。先日竣工をむかえ、ブログの記事が実際の現場の状態にちょうど追いついたことになります。

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 付属建家を手で解体。曳き家をして新たな基礎の上にのせる。一部増築してから古瓦をすべておろして屋根の解体。垂木、野地板をとりかえて新しい瓦をのせる。間取りの変更、構造補強のために新たに梁や柱を入れる。外部を決めて、内部の造作。
 こういったいわゆる古民家再生の仕事、新築の仕事の場合と重複する部分はありますが、やはり別物です。新築の場合はすべての判断を大工ひとりで決定することが可能ですが、再生工事の場合、過去の大工との対話が必要になります。なぜこの材料なのか?なぜこの寸法なのか?なぜこう組んであるのか?なぜこうおさめたのか?すべての仕事がこの問いかけからはじまります。
 丸ノコをはじめとする電動工具のほとんどない時代にほとんど手道具だけで家を建てた先代の大工たち。材料ひとつひとつの加工の跡からその仕事ぶりを伺い知ることができます。あまりに機械に頼りすぎてしまっている現在の家づくり、そのすべてを否定するわけではありませんし、私達はその恩恵を確かに受けています。しかし、家づくりの根幹、すなわち仕事にかける時間、手間、情熱といった目に見えない部分では、彼等に遠く及ばないことを思い知らされます。そういったさまざまな思いが交錯する中、先人の仕事をできるかぎり活かしながら、どこをどれだけ補修したり取り替えたり手を加えたりするかを考えて仕事にとりかかります。

 実感したのは、昔の家は”土に還る家”であること、そして、”再利用が可能な家”であることです。材料は木、石、土、竹、紙、草、そして少しの釘や金物。そのままの場所でそのまま土に還してやることが可能です。現在の家の材料は木や鉄の他は石膏ボード、ビニールクロス、塩化ビニル、コンクリート、アスファルト、防腐剤、コーキング、プラスチック等々。これらは自然の循環には乗りません。また、いろんな種類の材料がくっついている複合材料が多く、それが分別解体を非常に難しくしています。30年後に解体された際に出てくる膨大な量のこれらの廃棄物をどうやって処分するのか、付随してどういった問題が引き起こされるのか、誰もまだ真剣には考えていません。つくった後のこと、壊す時のことを考えないものづくりは、後世にツケをまわすだけで、認められるべきものではありません。 
 この家は大工二人でほとんど重機も使わず手道具だけで解体することができました。出てきたものは木、石、土。太い梁などは金物は使わず継手で組んであるだけなので、ばらして再利用できます。石や瓦は外構工事の際に使います。古い壁土はあつめて再度水を加えて寝かせておいて、また再度壁土として利用。ほとんどゴミがでないことを実感しました。これらは特筆すべきことです。

 現在の家づくりは省エネ指向で高設備指向です。高気密高断熱の家が推奨され、古い民家などはそれと対極にあるものとして、日本中で躊躇なくどんどん壊されていっています。昔の家はすきま風も多く、現代の生活からすると不快で不便であることは否定しません。しかし、逆に家づくりの思想は明らかに退化しているように思います。現在の材料や技術を古い民家に取り込んでやれば、快適な生活は十分可能です。

  今回の仕事では、普段の工事では巡り会うことのできない様々なことを経験、考える機会となりました。1年半もかけて古屋を改築するということは、2ヶ月ほどで新築が建つこの時代においてはばかげたことだといわれるかもしれません。しかし、工期や値段が第一の条件となる家づくりには、やはりこれからも異を唱え続けたいと思います。



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 できあがってみて、「100年前にこの家を建てた大工が見たら、なんていうだろうな」などと、ふと考えます。「ようやった」と声をかけてもらえるのか、それとも「何だ、この仕事は」と一喝されるのか。席を同じくするなんてことは望むべくもあり得ない状況ですが、こわくもあり楽しくもありそうです。またさらに、この家が壊されるのはいつだろう、次の世代の大工が見たら何というだろう、とも夢想します。

 年が明けたら見学会を開く予定をしています。場所は周防大島です。時期が来たらまた当ブログでもご案内したいと思います。少しでも興味を持たれましたらのぞいてみてください。



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