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木で出来ることは木でやりたい。

「木の家ネット」の取材を受けました。→記事

使い分け

釘とビスの話の続きです。

下地材に板を止め付ける場合、後に離れないようにする点でビスは釘に勝りますが、釘にも利点はあります。最初玄翁は釘の頭だけを叩きますが、釘の頭が板に近づいてくると、板も一緒に叩くようになります。そうすることで下地材と板の間にあった隙間を無くしながら打つことができます。板に反りがあった場合など、ビスの頭だけで押さえながら隙間をなくして密着させるのが難しい場合があり、釘を使う方が良い場合もある訳です。玄能で叩けば板に跡がつきますが、下地であれば問題なし。化粧の場合は、最後玄能をひっくり返して丸みのある方を使えば、板に傷がつくことはありません。コンプレッサーを使った釘打ち機はといえば、早くて連続して何本も打てて早いのですが、機械の細い頭で一発で打ち込むので、頭だけでしか押さえ込めない点で、ビスと同じく、手打ちに劣ります。ビスや釘打ち機を使う場合は、予め板と下地材を密着させておくことが前提になります。

(厚さ33ミリの下地板を90ミリの長さのくぎで止める。玄翁で手打ち。一本では抑えきれなかったので2本打ち)
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あとは施工性の問題。だんだんと重たい道具を引きずりながら仕事をするのが億劫になってきました。ビスを打つインパクトドライバーは1.4kg、鉄砲は大きい物だと2.6kgそれにコンプレッサーから伸びるホースがくっつくわけで、仕事中ずっとそれを携えておかなくてはならないけれど、手打ちの釘の場合は釘も玄能も腰袋に入れておけば両手は空で動けます。現場では当然早さも求められますが、一概に機械を使った方が早いとも言い切れません。思うように仕事が前に進まない若い衆を前に、何度かこんなことを言ったことがあります。「鋸を引いたり、玄能を振ったりする時間なんて高が知れている。その間の時間の長短で仕事の速さは決まる」 これがもし正しいとすれば、インパクトドライバーや鉄砲を手に取る時間の方が勿体無いという訳です。重たい機械を引きずり回して疲れるよりは、釘を千本手で打った疲れの方を取りたいと思ったりもします。 しかし場面場面で、早さ第一という場合やはり鉄砲は便利です。特に雨が怖い屋根仕事で、鉄砲は抜群の威力を発揮してくれます。

大工は木と木の間に隙間が開くことを極端に嫌います。特に造作仕事においては、どれだけ胴つきがついているかが、大工の腕の見せ所(一般的にはそうなってます)。口が開いた(隙間が空くこと)ような仕事をすれば手の悪い大工、下手くそ大工、場合によっては簡単に手抜き大工のレッテルを貼られてしまいます。見栄えが大事な化粧枠の仕事、特に和室の造作にビスは欠かせない。しかし、建築史家の村松貞次郎氏によれば、どうやら江戸時代まで日本は「無ネジ文化」だったらしい。とすれば、栓や楔、木の組手と最小限の釘だけで、昔の大工はそれをこなしていたわけです。江戸時代に戻る必要はありませんが、最小限の手道具と釘だけで作られた古い民家の改修に関わって先人の大工たちの仕事ぶりを目にすると、色々と考えさせられます。

最後に、解体時の問題。現時点で改修工事として請け負う家は築20年以上経たものが多く、それらの住宅にまだそれほどビスは使われていません。腰袋に玄翁とバールでほぼ解体が可能です。これが昨今のようにビスが主体だったらと思うとぞっとします。年数を経たビスはインパクトドライバーで逆回転させて抜こうにも、軸が錆びてもろくなっていて、折れてしまうことが多い。木の中で折れてしまったビスはもうほとんど抜くことは不可能です。解体すること、後に手直しすることを考えれば、ビスの使用は最低限に抑えたいと思いに至ります。

後から直す時のことを考えてつくる。直しやすいようにつくる。新築工事のなかった10年間で、そう考えるようになりました。つくった過程が見えるようにつくる。こわしやすいようにつくる。まずはこわす時の大敵、ボンドは使わないことから始まり、見えるところに脳天からの釘打ちを厭わなくなり、そして現在、ビスを減らしてゆこうという流れは、自分にとって自然な流れのように思っています。

釘は曲がる、ビスは折れる。

簡単な実験をひとつ。同じ長さの釘とビスをそれぞれ万力に固定して、ペンチで曲げると、、、釘は加える力に比例するようにゆっくりと曲がってゆき、ビスは最初はなかなか曲がろうとしませんが、力を加えてゆくと突然ポキッっと折れます。さっくり言えば、釘は柔らかくて粘る。ビスは硬くて脆い。それぞれ一長一短、初期剛性ではビスが勝るが、曲がりながら抜けながらも最後まである程度頑張ってくれるのが釘。そんなイメージです。

この関係は筋交いと貫の関係によく似ています。両方とも地震力(横からの力)に対して、倒れまいとする部材ですが、梁と柱の間に入った斜め材である筋交いは、横からの力が加わると瞬時に抵抗しはじめて変形しないように頑張ります。が、ある一定以上の力が加わると、突然ボキッと折れて倒壊に至ります。それに対して貫は柱に対して横に挿してある数段の板材、柱に対しては楔で両側から止めてあります。横からの力が加わると、少しずつ柱は傾きはじめて、どんどん変形は進みますが、相当程度まで倒壊しません。

自身が土壁プラス貫の構造を選択するのであれば、ある程度の変形を許容して頑張ってくれる釘の方が相性が良いんじゃないか。そんなところからも私の釘への回帰がはじまったわけです。

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釘とビス

めっきり釘を打つ機会が減りました。今、木造建築の現場では、ビス(ネジ釘)が釘に取って代わったわけです。12ミリ、15ミリといった薄い板や合板を広い壁などに大量に止め付ける場合には、大量の本数が必要になるために今でも釘は使います。が、そのほとんどはコンプレッサーを使った鉄砲打ちです。腰につけた釘袋から釘を取り出して玄翁で打つ場面が、今どのくらい残っているでしょう?

見習いの頃は、垂木や間柱、筋交いなども75ミリや、90ミリの釘で止めていましたし、天井板や壁板も小さな釘で止めていたように思います。90ミリの長い釘を打つ場合と、25ミリの短い釘を打つ場合では玄翁も使い分けていましたし、下向きに打つばかりでなく、壁なら横向きに、天井なら上向きに玄翁を振らなければならなりません。狭い場所では無理な体勢で釘を打つ場合も多々ありました。その頃すでに鉄砲の釘打ち機はありましたが、それでもいつも機械を使うわけではなく、手打ちの方が多かったような印象があります。
私の親方は、電動工具も人一倍早く取り入れていた方だと思いますが、それでも釘を手で打つことが普通だったのです。20年以上前は。

ビスにはネジが切ってあるため、木と木をくっつけた場合、釘と違って浮き上がる心配がほとんどありません。釘で浮き上がらないように止めるにはそれなりの工夫が必要ですが、ビスを使えば、(インパクトドライバという高価な道具が必要ですが)簡単にその懸念が解消されるということで、大工にとって必要不可欠なものになった訳です。釘からビスへという流れは強力で、思考が停止してしまうと無条件にビスを使う方が良い仕事だと思い込んでしまってもおかしくはありません。

しかし、ふと立ち止まって考えると、ビス一辺倒も良くないんじゃないかと考えるようになりました。このあたりのことを少し整理してみたいと思います。

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ミニ大工塾開催のお知らせ(山口県岩国市にて)

車であちこち走っていても、目に入る建築現場はハウスメーカばかり。町場の大工が建てる家を目にすることが少なくなりました。しかし調べてみると、住宅のプレハブ化率は2割程度。ハウスメーカー好きと思えるここ中国地方でも2.5割止まり。統計上では、まだまだ木造住宅自体は健在のようです。では、彼らはどこへ消えたのでしょう?これは推測にすぎませんが、プレカット(工場に木材の加工を任せること)が都会から田舎までこの国の隅々まで浸透しきってしまったことに原因があるように思います。

私が見習いに入った1994年のプレカット率は26%、独立した2000年は50%、2014年では90%。そして2018年現在、資料にはないですが、手刻みはさらに減って、おそらく数%でしょう。木拵えから墨付け、刻みで棟上げまで数カ月かかるところ、工場に出せば数日。大工は現場で材料が運ばれてくるのを待つだけ。そのため、大工が材料を抱えておいたり、広い作業場にお金のかかる木工機を何台も抱えておく必要がなくなりました。最新の電動工具やエアー工具を大きめのバンに積み込んでおいて、現場から現場を渡り歩けばいい、そんなスタイルになりました。 こうして大工がいろんな作業を工場に委ねて組立工に近くなってくると、相対的に社会的地位を下げて人に使われるようになって行くことになるのはある意味必然です。家づくりの機械化が進むと共に大きな資本が入り込み、個人でやってきた町場の大工は飯が食えなくなり、その傘下に入って下請け仕事に甘んじることになる。

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このような流れの中、巷には中古の木工機械が溢れるよう放出されました。おそらくそのほとんどはスクラップ行き。私は逆にそれを買いあつめて作業場を作りました。こんな望まない状況があったからこそ今の自分があるというのは、なんとも皮肉なものです。新品では手が出ないような数百万円する機械が、中古で格安で手に入るという状況には本当に助けられましたが、内心はいろんな感情が入り交ざります。先人大工たちがどんどん旅立って行く遺品整理をするような心持ちとでもいいましょうか。

つい先だって、いつもお世話になっている道具屋さんから墨さしをもらいました。ある年配の大工さんから「使う大工がいたらあげてくれ」と託されたものだと声をかけてくれました。「自分はもう歳で、これを使うような仕事はしないから」 大工仕事自体をやめたわけではないけれど、もう大きな材料に墨をつけて刻むような仕事はしないということなのでしょう。4本もらい受けて3人で分けました。墨さしは、墨付けの時に材料に線を引くための道具、新築の度に大工が竹を割って作るのですが、自分の作ったものとはだいぶ形状が異なります。全体的に細くて丸っこくて、鉛筆の太さに近い。使ってみると持ちやすく手になじむ感じ。今までに見たことのない形状は、この大工さんの遍歴の中で自分と向き合いながら長年かかって改良を重ねてできたものなのでしょう。将来の仕事のために作り置いていた道具、自分の引退の象徴として手放されたわけです。こういったものはお金では買えません。ありがたいことです。

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前置きが長くなりました。こうした時流に逆らい、プレカットに流れずにこれまで仕事をしてこれたのは、見習いの時に出会った「渡顎(わたりあご)構法」という理論上の裏付けがあったからです。「木に従う」という前提の元で、設計士と大工共同で、20年来構造実験を繰り返してつくってきた木構造のシステムです。このシステムを、興味を持つ皆さんに広く知ってもらいたい、少しでも同じ志を持つ仲間を増やしたいとの思いから、「ミニ大工塾」を企画しました。



日時: 2018年12月17日(月) 9時から12時頃まで (雨天決行)
場所: 山口県岩国市内の住宅建設現場
講師: 丹呉明恭氏(丹呉明恭建築設計事務所
内容: 「木に従うこと前提とした木造住宅、木構造について」
費用: 資料代実費(数百円程度) ※当日集めます。




大工さんはもちろん、設計士さんなど、現在の家づくりに疑問を持つ方々の参加を募集しますので、ご参加ください。
興味のある方はこのブログ内右欄の当方HPを開き、「お問い合わせ」をクリック、
件名に「ミニ大工塾参加希望」と記入の上、お名前等必要事項を書いた上で申し込んでください。
場所の住所など、こちらから返信させていただきます。
質疑応答など、みなさんと活発な議論ができるのを楽しみにしています。

久良工務店 代表 久良大作(くろうだいさく)

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